郷原信郎 『思考停止社会』

郷原信郎氏の『思考停止社会 「遵守」に蝕まれる日本』講談社現代新書を読みました.

世間を騒がせた様々な問題が,実は多くのメディアや官僚による的外れな追及によるもので,その結果として不当な被害をもたらしていると喝破していました.

たとえば,年金記録改ざん問題で社保庁職員は犯罪集団かのようなイメージが流布しましたが,実際のところ社保庁職員を批難できるような根拠はほとんどないようです.

また,不二家は,期限切れの食品を原料に使ったとしてバッシングされましたが,こちらも事実が相当歪曲されて伝えられていたようです.

そうしたことが,具体的な事実を示しながら,丁寧に論じられています.

僕がこの本から受けとったメッセージは,よりよい社会を構築したいなら何事も鵜呑みにするのではなく,各自が根本から問いなおし,それでもなお相互承認できるか,またそれは本来の目的に適ったものか,を検討していく必要があるということでした.

それが,私たちの社会を思考停止状態から救いだすための手立てである,と.

焦点を当てている問題群は,僕のそれとは違いますが,医療問題を根本から洞察して臨床実践を変える原理を置きなおそうとうする営みは同型じゃないかと思いました.

最近,こういう根源的な営みが様々な領域で起こりつつありますから,表層に現れる問題は領域によって異なっても,根本のところでは同型の問題が潜んでいるのでしょうね.

本書を読んで,この世界の希望と可能性を未来に引き継ぐためには,今まさに,現代社会の根本問題を完全消滅させる新たな原理群の開発とそれを実質化する実践が求められている,(僕自身これまであちこちで書いてきましたが)と再認識しました.

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