将来の社会設計

東日本大震災から約一ヶ月が経過しました。
しかし、いまだに被害の全容はみえないうえに、困窮している人たちへの支援もいきとどいていません。
また、福島第1原発はチェルノブイリと同レベルの原子力施設事故(レベル7)に相当すると発表されました。
もちろん、福島第1原発とチェルノブイリでは事故の仕方も被害の規模も今のところ異なるので、深刻度が同レベルだと発表されたからといって両者を同じだということはできません。
だけども、首都・東京から約200キロしか離れていないところに過去最悪の原子力施設事故であるチェルノブイリと同水準の深刻度と評価された施設がある、という事実はおそらく被災地のみならず日本の復興の足かせになるでしょう。
復興には経済の活性化が欠かせませんが、深刻な原子力施設事故によって電力供給が不安定になりますし、放射能による健康被害を恐れた海外企業を中心に日本から離れていくだろうからです。
問題はそれだけではありません。
いまは復興熱で忘れられがちですが、日本は東日本大震災以前からも大きな問題を抱えていました。
大きく言えば、人口問題、労働問題、財政問題が、それにあたります。
人口問題は少子化と高齢化が特徴であり、それによって人口減社会へと突きすすんでいました。
そうした社会では限られた働き手の積極的活用が不可欠ですが、人口増を前提にした労働システムがそれを阻んできました。
つまり日本は長期的に労働力不足が懸念されるにもかかわらず、年功序列&終身雇用という旧来のシステムがあるため、新しい労働者の参入を阻んできた、という労働問題があったのです。
さらには、日本には借金が約1100兆円あります。
国の借金を返済していくには歳出を減らし、歳入を増やすしかありません。
歳入確保では税収アップと増税があるでしょう。
けど、少子高齢化で働き手世代が減少し、しかも若い労働者の参入を阻む労働市場ですから、マーケットの拡大によって税収アップは期待できず、増税という選択肢しかおそらくありません。
歳出を抑えることは、疲弊しきっていた地方経済への補助金、高齢化によって増え続ける社会保障費などの問題に加えて、今回の東日本大震災の復興費に数十兆円かかると見込まれているようですから、なかなか難しいはずです。
一部で東日本大震災は、それ以前からあった問題を解決し、日本全体の復興のきっかけになる可能性があるという議論もありましたが、こうしたことを考えるとむしろ逆ではないかという危惧を、僕はもってしまいます。
日本は3.11以前の平時でもありえないぐらいやばい問題を抱えていたうえに、今回の未曾有の大規模災害に加えて、首都の約200キロ先で深刻な原子力施設事故があり、それらの解決の見通しもたたないためです。
実際、日経平均の動きは3.11以前のそれとは異なる動きになっていると思われます(前のほうが、日本経済に対する期待が感じられた)。
将来の社会設計は、そうした前提のもとで復興を実質化できる方法を考えていく必要があります。
多くの人は笑うかもしれませんが、今のところ僕が「日本をよりよい社会にするにはどうすればいいか」という観点から有効そうだと考えている方向性を大づかみに書いておけば、(1)首都機能移転、(2)都道府県から道州制、(3)社会インフラのコンパクト化、(4)消費税の増税と法人税の減税などの税法改革、(5)労働市場の流動化と労働条件の緩和、(6)議員や公務員の削減、(7)ベーシックインカム、(8)移民受入、(9)現役世代の意見を反映できる選挙システムの構築、などですが、もちろん他にもありえます(詳しくはいずれまた機会をあらためて書いてみたいと思います)。
ピンチはチャンスと言いますが、おそらく将来の社会設計そのものを変えなければ、東日本大震災はさらなるピンチの到来を早めるだけではないかと思います。
つまり物的、人的支援によって東日本大震災からのある程度の復旧は果たせても、設計図から書きあらためなければこれからやってくる危機には対応できないだろうと思うわけです。
これ以上の不幸を回避するためにも、将来の社会設計の立て直しからはじめていきたいものです。
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