気分存在であること



「気分や感情で物を言うな」という人が後を絶たないように、とかく気分(感情)は理性に比べて軽視されがちです。

しかし、この主張の前提には「合理性/非合理性」の対立図式がある、と正しく見抜いたのは、ハイデガーです。

彼は、38歳で発表した主著『存在と時間』のなかで、人間の本質契機のひとつに「情状性(=気分)」があると論じました。


つまり、気分が人間の存在構造を根源的に規定しており、合理性/非合理性の対立図式に先立つ“人間の本質”を表していると論じたのわけです。

原理的に考えると、この議論はしごく真っ当だと思います。

合理性/非合理性の対立図式もまた、気分によって現に開示、規定されるからです。

そう考えると、信念対立解明アプローチが、未だ起こっていない未来を想像して落ち込んだり、過去の出来事でくよくよ悩んだりするときに、“感じるままに感じること”の重要性を解くことは、人間の本質にかなったやり方ではないかと思います。

気分は人間存在の根本的な根拠だからです。