完全保存版!絶対に読んでおきたい作業療法の古典7選



素人と専門家の違いは、その領域の古典に通じているかどうかです。

素人は、ハウツーを知っていても、元々の根本モチーフを知りません。

専門家は、素人が知っているハウツーを押さえつつ、本来のあるべき姿を理解しています。

根本モチーフは、領域の成立を支えた古典を通して学べます。

作業療法の専門家として自立するためには、作業療法の古典にたしなむ必要があります。

特に、作業行動、人間作業モデル、作業科学などといった、作業に根ざした実践(occupation-based practice)に関心のある人は、作業療法の古典を知っておくべきです。

なぜなら、これらは作業療法の古典(作業パラダイム)を現代化する挑戦だからです。

以下では、作業療法学生、作業療法士ならば一度は絶対に読んでおきたい古典を紹介します。

①Studies in invalid occupation, a manual for nurses and attendants (1910)

世界初の作業療法の教科書です。

著者は、看護師のSusan Tracyです。

彼女は、看護学生時代に、整形外科の実習で作業が持つ治療的効果に気づき、その後、看護技術のひとつとして作業看護を体系化しました。

本書はその集大成です。

当時、作業療法は精神障害が対象の中心でした。

それに対して、Tracyは身体障害、発達障害にも作業療法を適用していきました。

その後、作業療法は幅広い分野で展開していきましたが、それは彼女のおかげだと言っても過言ではないでしょう。

ただし1910年当時、作業療法(occupational therapy)という概念は、地球上に誕生していませんでした。

なので、本書では、作業治療(occupational treatment)などといった表現が用いられています。



②Teaching the sick; a manual of occupational therapy and reeducation (1919)

建築士のGeorge Edward Bartonの著書です。

彼は、作業療法(occupational therapy)という概念の生みの親です。

また、作業療法の哲学的基盤のひとつであるアーツアンドクラフト運動の旗手でもあります。

Bartonは、自身の障害体験から作業が持つ治療効果を実感し、1914年にConsolation Houseを設立し、作業によって病者の治療と教育に取り組みました。

また1917年にはthe National Society for the Promotion of Occupational TherapyNSPOTを設立し初代会長に就任しました

彼の作業療法の特徴は、薬としての作業という考え方で表せます。

医師が症状に合わせて薬を処方するように、患者の障害にあわせて作業を提供するという発想が通底しています。

一見すると医学モデルに通じる考え方にみえますが、患者が作業に見いだす意味と価値、症状と作業の適合をブレンドする考え方であり、医学モデルと作業モデルを統合するような考え方の原型を提供しています。



③The work of our hands, a study of occupations for invalids (1915)

④Handicrafts for the handicapped (1916)

③と④の2冊をまとめてご紹介。

これらは、医師のHerbert James Hallと芸術家のMertice MacCrea Buckの共著です。

Hallは1910年にJounal of the American Medical Association (JAMA)に掲載された作業療法に関する論文でたいへん注目されていました

Bartonが作業療法という概念を誕生させる前だったので、彼はそれをwork cureと呼んでいました。

TracyとBartonとは異なって、彼は医師の処方のもとで作業療法を行うことにこだわりまし
た。

またBuckは、Bartonと同様にアーツアンドクラフト運動の旗手のひとりです。

アーツアンドクラフト運動は、芸術(手工芸)という作業が人間の人間性の回復に役立つという視点を持っていました。

③と④は、医療と芸術のコラボレーションによって誕生した作業療法の原型を示しています。



The work of our hands, a study of occupations for invalids (1915)



Handicrafts for the handicapped (1916)


⑤Occupational therapy, a manual for nurses (1918)

医師のWilliam Rush Duntonが著者です。

NSPOTの2代目会長で、作業療法の父と呼ばれる大人物です。

道徳療法を主導したBenjamin Rushの直系の子孫です。

つまり彼は、作業療法の哲学的基盤のひとつである道徳療法の血脈を引いているってことです。

Duntonは、医師が作業療法を処方し、看護師がそれを実践するという方法を採用していました。

本書は、看護師が作業療法を行えるように、作業を通して健康とウェルビーイングを高める技術がたくさん記載されています。

作業を通して支援するということはどういうことか、を理解にするには本書がうってつけだと思います。



⑥Reconstruction therapy (1919)

これも医師のWilliam Rush Duntonが著者です。

あの有名な「作業は食物と飲み物と同じぐらい生命に必要であるThat occupation is as necessary to life as foof and drink.という命題は本書で高らかに示されています

また本書で作業療法の原理が示されています。

彼は、1918年にPublic Health Nurseという学術誌で9つの作業療法の原理を示します。

本書ではそれを発展させて15の原理を示し、それが長いあいだ作業療法の基盤になりました。

関心がある人は、本書の227ページから229ページをご覧ください。

なおReconstruction therapyというタイトルになっている背景には、1917年にアメリカが第一次世界大戦に参戦し、当時の作業療法の指導者たちが戦傷者を支援する再建療法として作業療法を売り出したことがあります。



⑦The Philosophy of Occupational Therapy (1922)

最後は書籍ではなく論文です。

著者は医師のAdolf Meyerです。

Meyerはこの論文で作業療法の哲学を示しました。

Eleanor Clarke Slagleと二人三脚で発展させた習慣訓練はMeyerの作業療法哲学を基盤にしています

Meyerは生粋のプラグマティストで、作業療法哲学は治療という観点からそれを論じ直した内容になってます。

Meyerはスイスからアメリカに渡った後に鬱になって、健康と習慣の重要な関連性に気づきます。

と同時期に、習慣を重視するプラグマティズムに出会います。

彼の習慣訓練に関する文献を見ると、患者の障害を習慣剥奪などといった表現で丁寧に記載しています。

現代の作業療法が、習慣化(習慣、役割)を重視するのは、MeyerとSlagleの影響です。

The Philosophy of Occupational Therapy