作業療法と作業的公正



作業的公正(occupational justice)は、作業科学で提唱された比較的新しい概念です。

これは、「すべての人間は意味を感じる作業に取り組む権利がある」という意味で、作業療法の立場から推進している社会運動の一種です。

逆に、意味を見いだせる作業に取り組む権利が阻まれた状態は、作業的不公正と呼ばれています。

両概念が意味するところは、作業療法士には作業的不公正から作業的公正へとシフトチェンジしていく使命があるというものです。

作業的公正(あるいは作業的不公正)は、もちろん概念として新規性があります。

けど、社会運動という側面は作業療法のルーツをたどると、昔からその要素があったとい
う話になります。


作業療法の前身には例えば、道徳療法とアーツアンドクラフト運動があります。

これらは、とても多様で一言で表しにくいですけど、両方とも人間の人間性を回復するための社会運動という側面がありました。

いろいろな見解がありますけども、道徳療法は精神障害者を鎖から解放するという運動でした。

同様に、アーツアンドクラフト運動は、産業革命によって失われた人間の尊厳の回復という社会運動の要素がありました。

この運動の延長で作業療法(士)が誕生します。

したがって、作業的公正は新しい概念であるものの、その臍の緒は作業療法の創世記からあったと理解できるでしょう。

現代の医療保健福祉の技術として作業療法に馴染むと、作業的公正という作業する権利を主張する概念がピンとこないことがあるかもしれません。

でも作業療法の歴史を背景に考えると、昔からあった理念を復権させる試みであると解釈することができ、理解しやすくなるかもしれません。