【講義メモ】作業科学(2016年4月11日)

今日から学部3年生を対象にした「作業科学」がスタートしました。

春期は2年生と3年生に作業科学を教えます。

初日なので2年の復習をかねています。

3年生は事例分析を中心にやるので、講義は最初の数回でお終いです。

復習用に、本日の講義の重要なポイントをざっくりまとめておきます。

以下の内容は割愛しているところがいろいろあるので、講義を受けていない人にはわかりにくいかもしれませんが、ご了承ください。



作業科学は、作業に参加する人間の複雑なふるまいを探求する領域です。

作業科学は作業療法の基礎領域であり、かつ実践に豊かな示唆を与える応用領域でもあります。

作業科学者のウィルコックが言うように、作業は人間経験の中心であり、日々の生活に意味や構造をもたらし、人々の健康と幸福に良くも悪くも影響を与えます。

多くの文献が示すように、作業科学や作業療法における作業=occupationは、哲学者ジョン・デューイの作業論を発展的に継承したものです。

作業=occupationという概念には、生きるために必要な諸活動という意味あいがありますが、そうした意味が生じた背景には開拓時代、産業革命などがあります。

仕事という概念は作業=occupation以外にも、work、job、businessなどがありますが、このうち作業=occupationがフォーカスされて意味が拡張された理由は、先に述べた時代背景と概念分析による意味の豊潤さがうまく対応した結果であると理解できます。

デューイは、アドルフ・マイヤー、スーザン・トレーシー、エレノア・クラーク・スレイグルなどといった作業療法創始者たちに強い影響を与えています。

デューイ自体は作業=occupation中心の教育を展開しましたから、作業療法創始者たちの独創は哲学と医療をハイブリッドしたところにあるといえます。

デューイの作業=occupationは「経験」という概念と同型をなしており、ウィルコックが「作業とは人間経験の中心である」と定式化したのはデューイを引用していないとはいえ、アイデアの源泉が血脈として受け継がれたと理解できるかもしれません。






作業科学では、作業の知識を増やすためにいろんなフレームワークが提案されています。
そのうちもっともベーシックなものが、意味、機能、形態という切り口で作業を捉えるものになります。

意味とは、作業の目的、価値、意図、感情などを表しています。

機能とは、作業が発達、生活、人生、健康、幸福などに与える影響を表しています。

形態とは、作業の行い方、方法、手続き、道具・材料などを示しています。

作業療法士は、作業を通して健康と幸福にポジティブな影響を与えようとしますが、そのベーシックな手段として意味、機能、形態というフレームワークがあります。

つまりこの枠組みは作業=人間経験の諸側面を3つの確度から、すなわち人々の経験の意味、経験が与える影響、経験が生成される構造を捉えようというわけです。



作業療法士の役割は、クライエントの作業機能障害を評価し、治療・介入することです。

作業機能障害は、人間経験に何らかの問題が生じている状態です。

例えば、皆さんはいま講義を受けていますが、もし腰痛や頭痛があったり、周囲ががやがやうるさかったり、気持ちが落ち込んでいたら、講義という作業を適切に行えないかもしれません。

これは、皆さんの作業=経験に何らかの問題が生じていると理解できます。

作業療法士は、この経験の質に良い変化を生みだす役割があります。

経験の質は、身体の痛みをのぞくこで改善するかもしれませんし、心に安定をもたらすことでよくなるかもしれません。

あるいは、環境の変化が経験の質を高めるかもしれないし、何らかの活動に取り組むことが良質な経験をもたらすかもしれません。

作業療法士には、クライエントの作業に焦点化し、望ましい変化が生じる条件を作りだすことが期待されています。