【講義メモ】作業療法研究法(2016年4月13日)

学部3年生への作業療法研究法の講義メモです。

2回目の講義の内容になります(一部、講義を補足する説明を追加しています)。

以下は要約なので、講義を受けていない人はさらに理解しがたいかもしれませんが、どうかご了承ください。



前回書いたように、研究とは研究疑問を立てて解くことです。

解き方すなわち研究法は問いの内実によって規定されますが、大きくわけると以下の5つがあります。
  • 文献研究(文献レビュー)
  • 理論的研究
  • 質的研究
  • 量的研究
  • 混合研究法
理論的研究はかなり高度で、強く深い思考力と幅広い知見がないと遂行が困難なので、卒論で主に使うのは文献研究、質的研究、量的研究になります。






文献研究とは、研究疑問に関連する論文を包括的に収集して整理整頓し、分析することです。

文献研究には総説、システマティックレビューに整理できます。

総説は、研究疑問に対する造詣の深い人が、過去から現在までの論文を概観するものになります。

システマティックレビューは、電子データベースやハンドサーチなどを駆使して、研究疑問に関連する論文を網羅的に集めて、その質を吟味します。

この場合、収集する論文は研究疑問によって代わります。

例えば、治療に関する疑問であればランダム化比較試験が、予後に関する疑問であればコホート研究が価値をもちます。

質的研究と量的研究に先行して文献検討を行いますので、実際に文献研究の結果を論文にするかどうかにかかわらず、上記のようなことは必ず行います。



次に質的研究と量的研究です。

長いあいだ、量的研究がメジャーで、質的研究がマイナーな位置づけにありましたが、最近ではよほど偏った理解の人でなければ両方とも必要という認識が中心になりつつあります。

この2つは、比較しながら学ぶと理解しやすいです。

質的研究は、研究疑問を解決するためにインタビューや観察を通して得られた「言語データ」を用いる方法です。

作業療法でよく使われるのはグラウンディッド・セオリー・アプローチ系、KJ法系ですが、その他にも事例コードマトリクス、TEM、SCQRM、SCATなどがあります。

自身が使用する質的研究法の手法に加えて、哲学的基盤に関する理解が必要です。

哲学的基盤は大きな枠組みで言うと、ポスト実証主義、社会構成主義、解釈主義、構造構成主義などになりますが、それぞれにイデオロギーがあって一枚岩というわけではありません。

このうち、構造構成主義で量的研究の哲学的基盤としても機能します。

量的研究は、研究疑問を解決するために現象を数字化した「量的データ」を用いる方法で
す。

こちらもいろんな方法があって、この講義では構造方程式モデリング、一般化線形混合モデルなどを扱います。

量的研究も哲学的基盤からの理解が重要です。

ざくっと哲学的基盤を示すと、量的研究は実証主義ということになりますが、最近では頻度主義からベイズ主義へのシフトチェンジという文脈で説明されることもあり、こちらも一枚岩で構成されているわけではありません。



混合研究法は、質的研究と量的研究を相互に関連づけながら行う研究法です

これは、質的研究と量的研究の利点をそれぞれ活かしつつ、研究疑問を解決していこうという立場で、複数の視点から現象を捉えられるので豊かな知見をもたらしてくれる可能性があります。

質的研究と量的研究は異なる哲学的基盤があるので、そのまま併用すると折りあいが悪いです。

そのため、多様な哲学的基盤を活かせる哲学の立場に立つことが推奨されます。

そこで最も広く受け入れられているのは、プラグマティズムです。

プラグマティズムと一言でいっても内実はいろいろあるのですが、大きく示すと「役立つかどうか」という基準で多様な方法を承認できる立場で、混合研究法の可能性を引き出す理路として機能します。

他方、プラグマティズムに比べてマイナーですが、構造構成主義という哲学も混合研究法でしっかり機能する哲学です。

構造構成主義もいろんな側面があるので一言で説明しにくいのですが、研究の文脈に限って言うと、研究疑問の解決に使えるかどうかという基準でいろんな研究法を活用しよう考えるものです。

原理的に考えると、プラグマティズムと構造構成主義には精度に差があるものの、さしあたり両哲学は混合研究法にフィットするという理解でいればよいです。