【講義メモ】作業科学(2016年4月13日)

本日は学部2年生を対象にした「作業科学」でした。

復習用に講義メモを残しておきます。

以下の内容はいろいろ略しているので、講義に参加していないとわかりにくいかもしれませんが、ご了承ください。



前回は、作業=occupationが特別な意味をもつに至った経緯を説明しました。

デューイがoccupationという概念に多義性をもたせて、教育のあり方を変えることに挑戦したところから、バートン、ダントン、トレーシー、マイヤー、スレイグルらによって作業療法が創出されるためにはいくつかの背景が必要でした。

大きく示すと、それは道徳療法、アーツアンドクラフツ運動、プラグマティズムです。



道徳療法は、18世紀から19世紀にかけて、精神障害者を対象にした治療法として広まりました。

これは内科医のピネルらが、精神障害者は治療が必要な状態であり、適切な作業に従事することが、健全な心身を育み、人間性の回復に役立つという認識のもとで実践したことが起点になっています。

道徳療法はその後、社会進化論の台頭や社会経済情勢の悪化などによって衰退しましたが、その血脈が途絶えることはなく、作業療法の創始者たちに受け継がれました。



他方、アーツアンドクラフツ運動は、19世紀後半にはじまった美術工芸運動であり、かつ産業革命で失われた人間の尊厳を取り戻そうとする社会変革運動でもありました。

これは、ラスキンやモリスらが、手工芸は人間の人間性を回復するという発想のもとで展開し、それが発展するなかで病者や障害者の健康や幸福を改善し、社会参加を促進するというかたちで展開されるようになりました。

アーツアンドクラフツ運動における作業治療には、作業の「質」と「過程」に着目する立場があったものの、最終的に作業の過程を従事する考え方が作業療法に受け継がれました。






プラグマティズムは、19世紀後半から現代まで続く哲学運動であり、基本モチーフはイデオロギーの対立の克服でした。

つまりプラグマティズムはいわゆる信念対立の克服がテーマであるといえ、私事ですが、信念対立解明アプローチやOBP2.0が伝統的な作業療法とも親和性が高いと解釈できます。

さて、プラグマティズムに関してはいろんな議論があるんですが、極めて単純化して言うと、これは、対立する考え方ややり方があるときに、実際に役立つかどうかでその時々の有用性を判断しようというものです。

つまりプラグマティズムは、どんな考え方、やり方も役に立つ限りにおいてよいといえるという立場にたつことによって、いろんな信念対立を克服する可能性を示したのでした。



この3つの背景を踏まえると、作業療法は、健康、幸福、人間性を回復させるために作業を使うものの、その目的を達成するためならいろんな手段を柔軟に活用するという開かれた実践法であったといえるでしょう。

作業科学という学問領域は、こういう起源につながりつつ、作業する人間という複雑な事象の解明に取り組む領域であると理解できます。