【講義メモ】作業科学(2016年4月18日)

学部3年生に対する作業科学の講義メモです。

今回の講義は、たくさんの演習やディスカッションを取りいれました。

しかしこの講義メモではそれを割愛し、解説した内容のみで再構成しています。

以下は要約なので、理解しにくい部分があるかもしれませんがご了承ください。



作業科学では、作業という視点から人間理解を行います。

作業的視点で人間理解する利点は、クライエントの全体像を踏まえたうえで作業療法を展開しやすくなるところにあります。

作業療法は、ICFでいう活動と参加の支援を行いますから、全体像の理解は決定的に重要です。

作業科学が提案する作業的視点は、それを後押ししてくれます。






では作業とは何か。

作業科学で広く引用される定義は、Yerxaら(1989)やClarkら(1991)によるものです。

両者の定義は微妙に違うのですが、最大公約数的に示すと、作業とは、人間が行うことであり、文化のなかで名づけられた特定の活動の一群である、というものになります(※わかりやすくするために意訳してます)。

その他、カナダ作業療法協会(1997)の作業の定義は、アメリカ作業療法協会(1997)の公式文書でも引用されており、作業科学でも広く受け入れられていると言えます。

その要諦を示すと、作業とは日常生活を構成する活動と課題の集まりであり、個人と文化によって価値と意味が与えられたものである、というものになります(※わかりやすくするために意訳してます)。

これらの定義から、作業とは人間が普段していることだと理解できます。

この講義の冒頭で、作業科学では人間を作業という視点で理解するといいました。

これはつまり、クライエントが日々の暮らしで行っていることに着目すること、を第一義的に尊重するという意味になります。



これは、学生が作業療法士の思考法を習得するうえで、一定のステップがあることを意味しています。

結論をいうと、作業療法を学習中の人たちは、クライエントに出会ったときに、
  1. この人は普段、何をしているのだろうか?
  2. この人は、どんな疾患・障害をもっているのだろうか?
という手順で思考するようにしてください。

作業療法は医療福祉の文脈で学ぶため、学生が実習ではじめてクライエントにかかわると、最初から疾患・障害に意識が向きがちです。

でも、疾患・障害から考えはじめると、作業への視点が薄らいでしまい、クライエントの全体像が把握しにくく、作業療法を展開しにくくなります。

もちろん、プロの作業療法士はこのような手順で思考しているわけではなく、疾患・障害から作業を理解する人もいますし、作業から疾患・障害へと展開する人もいますし、あるいはその両面からダイナミックに思考する人もいます。

学生がいきなり、作業療法士が行うダイナミックな思考をできるわけではないので、先に示した順序でひとつひとつ学んでいった方が混乱しにくいでしょう。



さて、思考法のステップ1は、「この人は普段、何をしているのだろうか?」がよいと述べました。

この思考ステップを実り多きものにするために、作業科学で提案されている意味、機能、形態というフレームワークを導入しましょう。

これは、作業科学研究を説明するために提案されたものですが、作業的視点から人間理解を進めるときにも使えます。

意味では、作業の目的、価値、理由などに着目していきます。

機能では、作業の影響、作用、有用性などに注目します。

形態では、作業の手続き、方法、手段などに思考を向けます。

つまり、クライエントはその作業を何のためにしているのか?(意味)、その作業はクライエントの健康や安寧にどう影響しているのか?(機能)、その作業をクライエントはどんなふうに行っているのか?(形態)、という切り口で思考していくのです。

ひとまずは、クライエントと面接したり、観察したりしたときは、作業の意味、機能、形態に着目するようにします。

どんどん練習しましょう。



さらに豊かに思考するために、もうひとつのフレームワークを導入しましょう。

それは、作業機能障害の種類というフレームワークです。

これの利点は、作業という視点で人間理解を深めることに加えて、必要な支援が明確にできるというところにあります。

普段していることの問題点が明瞭になりますから、どういう作業療法が必要なのかが明瞭になるからです。

でも、習い始めはフレームワークがひとつ増えるので、頭のなかが忙しくなります。

作業療法士になるために必要な苦労なので、ひとふんばりしてくださいね。



さて、作業機能障害の種類はOBP2.0で導入されていますが、これはもともと作業科学者たちの主張をベースにしています。

作業機能障害の種類にはいろいろあるのですが、現在もっとも研究が進んでいる種類は作業不均衡、作業剥奪、作業疎外、作業周縁化の4つに整理したものです。

ざっくり説明すると、4つの種類は以下のようになります。

作業不均衡とは、作業のバランスの崩れです。

バランスの崩れは、時間、種類(仕事、遊び、日課、休息)、意味などがあります。

作業剥奪は、外的要因によって作業が制約された状態です。

例えば、施設入所しているためにするべきことができないのは、作業剥奪です。

作業疎外は、作業に楽しみや重要性を見いだしたりできない状態です。

例えば、自宅の療養生活がたいくつでつまらないのは、作業疎外です。

作業周縁化は、自他のあいだで作業に対する認識にギャップがあって、自分が選択した作業にしっかり関与できなかったり、適切に評価されなかったりする状態です。

例えば、障害があるからという理由で復職を阻止されるような状態です。

作業療法を習い覚えるときは、「この人は普段、何をしているのだろうか?」というステップから思考します。

つまり、このステップから面接、観察を行うわけです。

その際、先ほど作業の意味、機能、形態から掘り下げると豊かに理解できると述べました(実際にワークしました)。

ここからさらに豊かに実践するために、作業機能障害の種類というフレームワークを導入することになります。

やることが増えるので、最初はしんどいかもしれませんが、どんどん練習することで慣れていきましょう。



作業科学には他にも便利なフレームワークがあります。

作業療法士は、さまざまなフレームワークを駆使しながら、クライエントの支援にあたり
ます。

今回は、意味、機能、形態、作業機能障害の種類を学び、実際に使ってみました。