【講義メモ】作業科学(2016年4月27日)

時間があいてしまいましたが、学部2年生を対象にした作業科学の講義メモです。

要点のみ書いているのでわかりにくと思いますが、ご了承ください。



前回、哲学的な作業の議論を確認し、作業は人間の経験である、経験は連続性と相互作用の原理で基礎づけられる、と学びました。

今回は、作業は人間の経験であると言ったとき、そもそも人間とは何だろうか、という問題を哲学的に考察することになります。

作業科学では「作業的存在としての人間」という考え方を採用しますので、人間の哲学的な議論を理解し、作業と人間の関連を把握することはとても重要です。



人間の哲学は、作業の哲学よりもずっと昔からあります。

その全容は90分1コマで理解できないので、ここではマックス・シェーラーの人間類型論を手がかりにしていきましょう。

拙著『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』でも紹介しましたが、人間類型論は1)有神論的人間論、2)ホモサピエンス人間論、3)ホモファーベル人間論、4)生命主義的人間論、5)要請的無神論的人間論に整理されています。

これらをざっくり要約すると、次のようになります。

有神論的人間論は、ユダヤ教やキリスト教的な人間観であり、神による人間と世界の創造という理念を軸に、週公的存在としての人間という考え方が展開しています。

ホモサピエンス人間論は、理性的存在としての人間という考え方を前提に、人間は世界を正しく認識でき、考えた内容を実現できる力を持ち、人間とそれ以外の動物は質的に異なる存在であるという主張がなされています。

ホモファーベル人間論は、衝動的存在としての人間という考え方であり、人間と動物の間には言語の使用、道具の使用、思考の発達などの程度の差しか存在していないというものになります。

生命主義的人間論は、退廃的存在としての人間という視点であり、人間と動物を区別する理性によって病気になったととらえて、理性は人間の生命を否定するものであるという考え方へと展開していきます。

要請的無神論的人間論は、可塑的存在としての人間という考え方であり、人間は自由な自己形成を通して成長する存在であるという理解を提供しています。

かなり駆け足で紹介してきましたが、人間類型論はこれまでの人間の哲学への俯瞰的視点を提供してくれていると理解できます。






さて、人間の哲学はさまざまな議論があるとわかりました。

ここから作業と人間の関連について考えていきましょう。

前回、作業は経験であると学びました。

この経験は、連続性と相互作用の原理によって形成されています。

連続性の原理は、過去は現在につながり、現在は未来に続くという考え方です。

相互作用の原理は、個人と世界は互いに影響しあうという考え方です。

先ほど、人間類型論を俯瞰してきましたが、どの類型にたってもこの2つの原理は妥当すると理解することができます。

例えば、人間は神の被造物であったとしても、環境世界との相互作用は免れないし、現在の行いが過去と未来のつながりのなかにあるという考え方から抜けられないはずです。

これは他の類型でも同様でしょう。

例外はどんどん検討してもらったらよいのですが、むしろ、いま現に生きているあらゆる人間は経験していると理解したほうが話が早そうです。

つまり、作業科学でいう作業的存在としての人間という考え方は、いま現に生きている人には例外なく妥当しそうだ、作業的存在という視点は人間の人間性の理解に欠かせないも
のだといえそうだ、と理解することができるでしょう。