ヘルスケア領域における構造構成主義関連の書籍

阿部泰之先生(旭川医科大学)の単著『ナニコレ?痛み×構造構成主義: 痛みの原理と治療を哲学の力で解き明かす』がでましたね。

本著は、阿部さんの臨床と哲学をミックスした洞察が展開する渾身の力作です。

本書の感想は読み込んでから改めて書きます。







ぼくがヘルスケア領域で構造構成主義研究に取り組みはじめたのは、2005年前後です。

当時、西條剛央さんはまだ名著『構造構成主義とは何か―次世代人間科学の原理』を出版する前でした。



なので、構造構成主義の原型となる彼の諸論文を読みつつ議論しつつ、ヘルスケア領域へ
継承するための理路を必死こいてつむいだものです。

健全な学的システムにおいて、新しい理論は否定されるか批判されるかです。

次代に信頼できる知識を伝えるためには、これは当然の淘汰圧です。

なので、最初はなかなかつらい状態が続きました。

当時、2人とも一介の大学院生(ぼくは修士過程、西條さんは博士過程)に過ぎず、そりゃまぁ必死になって頑張りました。

が、そのかいもあって、いまでは阿部先生の新著に代表されるように、この領域でいくつか構造構成主義関連の書籍が読めるようになりました。

もちろん、健全な学的システムが機能するかぎりは、淘汰圧に打ち勝ち続ける必要があるものの、当時の大変だった船出を思い出すと何だか感慨深いです。



ヘルスケア領域の構造構成主義関連の書籍は増えつつあるので、阿部先生の新著を通してこの領域に関心を持った人のために、読んでおいたほうが良い主だった書籍をあげておきます。

まずは、阿部先生の著作から。

本書は、臨床で問題になる疼痛を、構造構成主義の観点から解読し、診断と治療まで一貫して論じています。

痛みはどの領域でも問題になりますから、読んでおくことによって痛みの理解が深まり、対応に幅がでるようになるでしょう。

「痛みとは何か」を考えたい人におすすめ。



次に、岡本拓也先生の著書です。

本書は副題で緩和ケアの本質を解くと銘打ってますが、実のところ全ヘルスケア領域に通じる理路を展開しています。

「医療とは何か」を考えたい人におすすめ。

岩田健太郎先生の著書も必読です。
本書は構造構成主義を武器に、感染症をはじめとする病気一般はある種の構造であり、現象に還元することによって十全に把握できるという視点を提供してくれます。
「病気とは何か」を考えたい人におすすめ。



斎藤清二先生と岸本寛史先生の『ナラティブ・ベイスト・メディスンの実践』もおすすめです。

本書は序文に「認識論としてのNBMは、社会構成主義、構造主義科学論(構造構成主義)、ナラティブ論などの、広義の構成主義(構築主義)をその背景としており」と論じており、ヘルスケア領域で構造構成主義についてはじめて言及した書籍です。

構造構成主義とは何か―次世代人間科学の原理』は2005年に出版されましたが、本書はなんと2003年の出版で斎藤先生たちの先見の明がうかがい知れます。



最後に、ぼくの『医療関係者のための信念対立解明アプローチ』です。

これは、信念対立の克服という構造構成主義のモチーフを体現するために、構造構成主義をベースにしながらさまざまな領域の理路を組みこんで実践モデルとして体系化したものです。

信念対立の克服に関心がある人におすすめ。





他にも、主だったヘルスケア関連の構造構成主義の書籍は、以下のようなものがあるので、関心がある人は手にとって見てください(他意はなにのでもれているものがあれば教えてください^^;)。