ナニコレ?痛み×構造構成主義: 痛みの原理と治療を哲学の力で解き明かす(阿部泰之・著)

献本御礼。

今朝、読了しましたので感想を書きます。




本書は、ありそうでなかった痛みの専門書です。

刺激的な議論が盛りだくさんで、とっても面白かったです。

その独創は、人々が医療を求める最大の理由である「痛み」を、構造構成主義の立場から哲学的に解明し、実際の臨床へと展開しているところにあります。

「痛みの治療に哲学が必要なのか」と思う人もいるかと思います。

その疑問に対して著者は「『科学的』にだけ考えているゆえに越えられない壁があり、それが”治せない”痛みを作っている」(p10)と指摘したうえで、「痛みというものがなんなのか、どのように考えたらよいのか、根本から考え直す必要がある」(p14)と答えています。

つまり、従来の痛みの捉え方には根本的な問題があるので、よりよい治療を行うためには、もう一回ゼロベースで考え直す必要があり、それには哲学が有益であるというわけで
す。




では痛みとは何か?

本書の答えは、「痛みとは、契機ー志向相関的に構成され続ける構造である」というものになります(p60)。

これだけみると、よくわからないと思います。

が、要するにこれは、痛みとは単純に客観的事実や主観的体験のみに還元できるものではなく、さまざまな要因の影響を受けながら立ち現れる事象だと捉えることができる、という理路になっています。

それを、構造構成主義的に言うと「痛みとは構造である」(p60)と表現できるわけです。

この理路の利点は、「大変複雑な影響を受けているため、単純に”鎮痛剤”を飲むだけでは治まらない」(p9)慢性痛の理解を深めて、少しずつひもときながら対処していける視座を開けるところにあると言えます。

具体的な実践は、本書の7章で紹介されています。

これを読むと、構造構成的痛み論(構造構成的慢性痛症治療)の応用の仕方がとてもよくわかるはずです。

本書の読み方ですが、著者は1章から読む方法を薦めていますが、ぼくは実践が示されている7章から読む方がよいように感じました。

ぼく自身、以前に機会があって実際の実践を知ったことによって、著者が提案する構造構成的痛み論のほんとうの意義と可能性に気づくことができたからです。

このブログで紹介した以外にも、志向相関的自己開示という構造構成主義研究者にとってもユニークな議論があったり、痛みの先行研究がわかりやすく紹介されていたり、いろいろ読む価値のある内容がありました。

また構造構成主義の入門書としても読めると思います。

ともあれ、本書は痛みに対する視点を豊かにしてくれると思いますので、職種を問わず多くの医療従事者に読んでもらいたいです。