発達領域とOBP2.0

中野大輔さんから「何かアドバイスあればよろしく」とコメントをもらったのでリレー記事を書きます。

発端は、以下の記事2本です。
中野さんが言及している論文は以下です。
その後、論文の著者の田中啓規さんと中野さんのやりとりがありました。

研究論文とSNSを通して意見交換が進むところに時代の変化を感じました。
よい時代になったものです。



まずOBP2.0の簡単な解説です。

この理論は、信念対立解明アプローチと作業療法をシームレス化したものであり、障害者から健常者まで作業に問題がある人に対して適用できるように設計されています。

発案者&開発責任は寺岡睦さん(作業療法士、博士(保健学))で、彼女が学部3年生のときに閃いたアイデアがベースにあり、それに可能性を見いだしたぼくも全面参加することで、どーにかこーにか理論の具現化ができました。

OBP2.0に実装した機能は以下の2つです。
  • チームワークのマネジメント
  • 作業機能障害の評価と介入
チームワークのマネジメントは信念対立の解消によって実質化します。

信念対立という概念は聞きなれないでしょうが、これは人間関係で生じるトラブルの総称のようなもので、哲学由来の概念ですが現時点で実証できる段階まで進み、因子の再現も確認できています。

作業機能障害は作業剥奪、作業不均衡、作業疎外、作業周縁化に整理され、現在のところ対象を変えても4因子が再現されることも確認しています。



OBP2.0を基盤にした尺度には、CAOD(作業機能障害の種類と評価)があります。
開発責任は寺岡さん。

これは自記式型であり、クライエントの作業機能障害とその種類の状態を推定できます。

以下のサイトから無料ダウンロードできます。
CAODシリーズとして、スクリーニング型、観察型の開発を進めています。

スクリーニング型CAODはSTODを呼び、これは清家庸佑さんが中心になって取り組んでいます。

観察型は寺岡さんが担当です。

数年以内に、臨床へ還元できるように研究開発に取り組んでいます。

介入研究に進むためにも、評価尺度がないと話にならないので、ひとまずこれらの完成を優先させているところです。




さて、話を本題に戻します。

中野さんからの問いは、お子さんへの還元について何かアドバイスはないかというものでした。

いろんなお子さんがいるので、これはなかなか一言で答えにくいですし、中野さんや田中さんは発達支援の専門家なので、お子さんへの活用はお二人が実践を通してよりよい解にたどり着くものと思われます。

そのうえで、Developerの一人としてひとまず共通して言えそうなことは、作業機能障害(作業剥奪、作業疎外、作業周縁化、作業不均衡)の状態・原因を把握することが大事だろうということです。

例えば、脳性麻痺で手足がこわばりが強く、バーバルなコミュニケーションもなかなか難しい場合は、お子さん自身が作業に関わること自体が難しく、作業機能障害が全般に生じているという判断になるかもしれません。

そうなると、作業機能障害というフレームワークで問題の構造がつかめないので必要な支援を決めがたくなります。

OBP2.0ではそうした場合、医学のフレームワークを活用したらよいわけですが、ここではもうちょい作業機能障害で説明します。

さて上記のような判断が難しい事例では、作業療法士の現象に対する解像度を高めて、作業剥奪、作業疎外、作業周縁化、作業不均衡の前後関係を整理したり、優先順位をつけたりしながら、個性ある作業機能障害の全体像を見抜いていく必要があるでしょう。

例えば、障害がある心身を用いて作業に関与する様子、作業への関わりと環境の影響関係、親子の関わり方、普段の生活場面などで面接・観察・分析を行い、きめ細やかに整理していくと、作業機能障害の改善に必要な援助が見つけやすいかもしれません。

その際、作業剥奪、作業疎外、作業周縁化、作業不均衡とその組み合せに関心を置くと相関的にその点に関する解像度があがり、現象を受け取りやすくなるはずです。

判断が難しい事例でとにかく重要なことは、作業機能障害という現象への解像度を高めることです。

解像度が高まれば、目の前で起こっている出来事をクリアに整理でき、必要な支援を見通しやすくなるからです。

それを実質化するためには、上記に挙げた視点に注意を向けることが役立つでしょう。

また、作業(occupation)はもともと子どもの成長を促進する根源的な原動力として着目された概念ですから、作業機能障害というフレームワークとお子さんの支援は親和性が高いはずです。

そういうルーツも念頭におきながら、ぜひいろんなやり方を見つけていってもらえたらと思います。

アドバイスになっているかどうかよくわかりませんが、ひとまず以上です。