作業と活動を区別する臨床上の意義



臨床で作業と活動の区別はいかなり意味をもつですしょうか。

以下の記事で紹介したように、作業とは特定の個人に固有の一回限りの経験です。

他方、活動とは社会文化的なイメージです。


作業療法の文献を読むと、作業と活動は似て非なるものであり、明確に区別した方がよいと指摘されています。

作業療法は実践の学です。

なので、両概念の区別は臨床上なんらかの価値をもちます。

最初の1文は、その価値っていったい何なのだろうか、という問いです。




結論から言うと、人間行動につけられた名称(例えば、車の運転、職業復帰、料理、SNS)からのイメージと特定の個人が経験する内容には違いがあって、最善の作業療法を行うためにはクライエント固有の経験に注意を向ける必要がある、と自覚しやすくなるところに、両概念を明瞭に区別できる臨床的な価値があります。

例えば、長年主婦を行ってきたクライエントが自宅復帰したときに料理など家事ができるようになりたいと言ったとしましょう。

それに対して、作業療法士は家族に貢献できる意味のある作業役割への復帰というイメージをもつかもしれません(つまり活動ね)。

しかし、クライエントは家事なんてやってもやらなくても誰にも認められずむしろやらないですむならやりたくないという経験があるにもかかわらず、そーでも言わないと自宅に帰れないと思っていっているのかもしれません(これは作業です)。

家事という名前から連想するイメージ(活動)は、個人の固有の経験(作業)とは必ずしも連続していないので、こーゆーことが起こりえます。

別の例では、作業療法士にとってウォーキングは健康によいし、気分転換になるだろうからクライエントに勧めたいと思っていても、クライエントにとってそれは単に疲れるだけの運動かもしれません。

作業と活動は違うという視点を明瞭にもっておけば、作業療法士が介入中に経験していることはクライエントの経験ではなく、クライエントのそれはその人固有の一回生起の現象なので固有の世界観の内側から見ていかないといけない、と気づけるはずです。

臨床では、そーした視点に注意を払う必要があるので、昔から作業療法では作業と活動という区分が議論されてきたわけですね。