系統樹的に見る作業療法と理学療法



歴史を踏まえたうえで系統樹的に考えると,作業療法と理学療法は類縁関係ではないでしょう.

系統樹とは、生物学の教科書で見かける生物の類縁関係を分類した図です。

人間と猿は共通祖先じゃないか、とか、鳥類は恐竜から分岐したんじゃないか、など進化の過程を図式化したあれです。

歴史を踏まえて系統樹的に見ると、作業療法は理学療法よりも教育、実践哲学、芸術、看護、ソーシャルワーク、道徳療法、社会運動などに類縁が強いです。

これは新しい発見でも何でもなく、作業療法の歴史に関する膨大な先行研究ですでに明らかにされている知見です。

他方、理学療法は作業療法よりも物理医学(physical medicine)、整形外科(orthopedics)、マッサージ、医学的リハビリテーションなどとの類縁が強いと感じています。

文献を読む限りはそう思います。

2度の世界大戦で作業療法が理学療法に急接近したために、表面上、両者の区別がつきにくくなりましたが、歴史を踏まえて系統樹的にとらえ返すと、作業療法と理学療法の類縁性は弱いでしょう。




発生的に考えると、作業療法と理学療法の類似性よりも、作業療法とソーシャルワーク、芸術、実践哲学などとの棲み分けが問題になってもおかしくないんですよ。

上記のようなこと書くと、「それがいったいどんなええことあるねん!?」といぶかしく思う人がいると思います。

でも、こういう議論で得るものがないと思うのは早計です。

ええことなさそうで、実はすこしええことあるんです(ぼくは作業療法士なので、以下は作業療法を中心に書きますが、理学療法士は理学療法に置き換えて読んでください)。

では、どんなええことあるのか。

作業療法の創設と系統を理解すると、作業療法の進むべき道を理解しやすくなる、というメリット(ええこと)があります。

創設の理念を理解すると、他の領域との比較で自らを規定する必要がなくなるんです。
過去が未来を照らしてくれるわけです。

特に、作業療法のようにもともとある領域ではなく、特定の意図をもった人々によって新たに(といっても100年以上前ですけど)創設された領域は、そうです。

不安定な時代ですから、作業療法の未来を心配することもあります。

でも、どういう道に進むべきかは、ぼくたちのために領域を切り開いてくれた人たちが暗に示してくれています。

この手の議論は、そういう仕方でええことがあるんです。