作業療法における「習慣」の哲学的意味




正確に理解している人は少ないですが、結論から言うと、作業療法における習慣には「人間性の基盤」という哲学的意味があります。

習慣とはセミオートマティックに行えることです。

人間作業モデルではこれを「習慣化」と表現しています。

1日の大半は習慣でできています。

そのため、習慣という概念は単に、1日、1週間、1ヶ月、1年などといった日々のスケジュールを表していると理解されがちです。

しかし、この理解では習慣の意味を十全に受けとれていません。

作業療法における習慣概念は、生活のバランスという意味を超えて、人間の人間性が構成
される条件という意味を持っています。

作業療法で習慣が明確に着目されるようになったのは、アドルフ・マイヤー&エレノア・クラーク・スレイグルの習慣訓練(habit training)からです。

習慣訓練は、患者の主体性を尊重しながら、健全な日々を送れるようにコントロールする
方法でした。

習慣概念は後いくつかの変遷を経ながら、マリー・ライリーの作業行動、キールホフナーの人間作業モデルへと継承されていきました。

もちろんCMOP-Eや作業科学でも、作業バランス、作業不均衡などといった概念で習慣に焦点を当てています。

習慣は、作業療法で重要なトピックのひとつです。


マイヤーとスレイグルの習慣訓練は、ウィリアム・ジェームズジョン・デューイの習慣概念に全面的に依拠したものでした。

作業療法における習慣の意味を理解するには、へその緒に位置するマイヤーとスレイグルの基盤にある議論を理解しないと話になりません。

ではジェームズデューイはどう議論したのか。

彼らには、プラグマティズムの論客という共通点があります。

しかし厳密に言うと、ジェームズデューイでは習慣の意味付けは異なります。

でもここで細かい違いに言及すると理解が難しくなるので、最大公約数的な共通点を示しますね。

両者の大きなポイントは、習慣を通してその人らしさが形成されるというものになる、と理解することができます。

例えば、よく怒る人は怒るたびに怒ることがその人っぽさを表すようになます。

あるいは、ダラダラ過ごす人は時間を無駄にするごとにそうすることがその人の特徴を表すようになります。

そうした行動は繰り返せば繰り返すほど、行うのがさらに容易になって、その循環から抜けられなくなります。

人間の人間性(その人らしさ)は思考・感情・行動の繰り返しによって形成される、とい
う意味が習慣という概念に込められています。

この辺の話は以下の文献が詳しいです。


したがって、作業療法でクライエントの習慣に焦点を当てるとは、単に日々の生活バランスに注意を向けるという意味をはるかに超えていると言えます。

作業療法における習慣の哲学的意味は人間の人間性の形成です。

習慣を評価するとは、その人らしさを理解することです。

習慣に介入するとは、人間としてのあり方を支えるということです。

ぼくたち作業療法士が、クライエントの習慣に視点を向けるときは、そういう意味を持ってこの領域で習慣という概念が継承されてきた、という理解が必要です。

作業療法で習慣を評価・介入するときは、単なる日課にアプローチしているわけではないんですよ。