対立と信念の関係性



ぼくたちは、信念対立(belief conflict)という問題群を探求しています。

対立の種類には、課題、過程、関係があります(以下、参照)。
では、対立と信念はどーゆー関係にあるのか。

これを考えるにはまず、対立とは何かという問題を整理する必要があります。

対立には膨大な先行研究があり、さまざまな定義が提案されています。

古典的だけど有名な定義をふたつ紹介すると、例えば、Tedeschiら(1973)は、対立とは各人の目標や行動が相容れない状態で生じる、と定式化しています。
  • Tedeschi, J. T., Schlenker, B. R., & Bonoma, T. V. (1973). Conflict, power and games: The experimental study of interpersonal relations. Chicago: Aldine.
また、Smith(1966)は、対立を各人の条件、習慣、目標が根本的に両立しない状態である、という定義を提案しています。
  • Smith, C. G. (1966). A comparative analysis of some conditions and consequences of interorganizational conflict. Administrative Science Quarterly, 10, 504–529.
もうちょい最近の定義を確認すると、例えば、Pruittら(2004)が、対立は各人の欲望が両立しないという信念(belief)である、と述べています。
  • Pruitt, D. G., & Kim, S. H. (2004). Social conflict: Escalation, stalemate, and settlement. New York: McGraw-Hill Higher Education.
つまり、対立は、ある人の願望が達成されたら、別の人はそうすることができない、という信念がともなう、というわけです。




っとまぁこんな感じでいろんな定義があるわけですが、実のところ、専門家間で合意形成された対立の定義はないのが現状です。

しかし、幾人かの研究者が指摘しているように、さまざまな対立の定義から共通の構造を抽出することはできます(例えば以下)。
  • Baron, R. A. (1990). Conflict in organizations. In K. R. Murphy & F. E. Saal (Ed.), Psychology in organizations: Integrating science and practice (pp. 197–216). Hillsdale, NJ: Erlbaum.
で、対立の共通の構造は、最近の文献を踏まえてさくっと意訳すると以下の通り。


  • 対立はゼロサム状況で生じ、個人や集団間で相反する利益を含む
  • 相反する利益は認識された状態でなければならない
  • 対立には互いに利益を妨げるという信念(belief)がともなう
  • 対立はプロセスである
  • 互いの行動は他方の目標達成への妨害になる
信念は広く対立研究の文脈で捉えると、対立の共通の構造に含まれるわけです。

では、ここでいう信念とはどーゆー意味か?

実は、信念はそれほど特殊な用語ではなく、私たちが経験を通して構成する様々な確信という程度の意味で使われています。

信念対立解明アプローチでは、現象学や構造構成主義の流れから信念を世界観という意味で使用していますが、これも現象を通して成立した確信構造という意味なので、対立研究のそれとそれほど異なる意味が含まれるわけではありません。

というわけで、対立と信念は信念対立解明アプローチに限らず、対立研究という広い視点でとらえてもしっかり結びついている、と結論づけることができるわけです。

信念については、以下のweb連載で詳しく解説しているので、関心がある人はぜひご覧になってください。