対立の哲学とパラダイムシフト



信念対立は直接的には現象学から構造構成主義の流れで設定された概念です。

これは、主観と客観の対立の克服からはじまり、持続可能な社会の構築に至るまで重要なコンセプトを担っています。

信念対立は人々の意見や価値観の確執であり、組織でたびたび生じることになります。

組織における対立には、現象学→構造構成主義の系譜とは異なった対立の哲学があります。

信念対立研究に取り組む人は、組織対立の哲学についても知っておくとよいです。

以下の2つの文献では、組織対立の哲学について簡潔にまとめてあります。


  • Robbins, S. P. (1974). Managing organizational conflict: A nontraditional approach. Englewood Cliffs, NJ: Prentice-Hall.
備忘録がわりに要約メモしておくと以下の通り。

1.古典主義/伝統主義

論者によって理路は異なるものの、共通しているのは「対立が組織にとって有害である」という暗黙の前提です。

つまり、対立=悪という仮定が背景にあって、建設的な対立があるという視点があるのです。

なので、その対策は機械的、科学的、官僚的な組織構造を設計することによって、組織から対立を排除することに集中します。

例えば、代表的な論者のひとりである機械エンジニアのTaylor(1911)は、科学的な原則を組織に適用すれば労使間の対立は消失すると論じています。

しかし、それは結果として人間を機械のように扱うので批判を浴びることになります。




2.行動主義

次の行動主義は、古典主義/伝統主義のように組織から対立を排除できると考えるのではなく、逆に、組織において対立は避けることができない出来事であると認識します。

またこれは、古典主義/伝統主義が設定した対立=悪という構図に依拠せず、対立はときに組織のパフォーマンスとアウトカムを改善することに役立つという視点を提供しています。

例えば、Follett (1926)は、対立がより高いレベル(建設的なレベル)で行われれば、社会と個人の進歩が促進される、と主張しており、対立=悪という単純な構図が排されていることが理解できます。

しかし、行動主義は上手に対立する条件を明確に取り出せなかったという問題がありました。

3.相互交流主義

これは、対立は必ず生じるという認識のもと、それには利点と問題点があって、異なる意見を持つ人たちが合意に至れるような条件を作りだそう、という考え方です。

現代のコンフリクト・マネジメントの必要性は基本的にこの立場から生まれています。

制御できていない対立は、組織の機能不全を引きおこします。

また組織の対立が多すぎても停滞や崩壊を生じさせます。

しかし、対立は限度内であれば組織の崩壊を意味するのではなく、むしろ組織を変える手段の一つとして活用できるという立場なのです。

つまり、建設的で中程度の対立は組織の成長と変化に役立つというわけです。

例えば、以下の文献がこの立場に該当します。

  • Nightingale, D. (1974). Conflict and conflict resolution. In G. Strouss, R. E. Miles, C. C. Snow, & A. S. Tannenbaum (Eds.), Organizational behavior: Research and issues (pp. 141–163). Madison, WI: Industrial Relations Research Association.

さて、以上が対立の哲学の概観でした。

対立の哲学はいくつかのパラダイムをシフトしており、現代は対立は必ず生じるものであり、利点と問題点を踏まえつつ有効活用していこう、と考える立場が主流です。

現象学→構造構成主義、ならびにその系譜から生じた信念対立解明アプローチもまた同じスタンスであると理解できます。

ただ現象学→構造構成主義→信念対立解明アプローチの流れは、哲学の根本問題である認識問題として信念対立を位置づけており、組織現象としての対立という理解とは文脈が異なっています。

それが具体的対策の差につながっていると言えるでしょう。

プラグマティックに言えば、どちらも役に立つ限りにおいて大切なので時と場合に応じて使い分けていくとよいですね。