実践家の感情と臨床




実践家がどう思考するかは、クリニカルリーズニング研究でいろいろ明らかになっています。

例えば、作業療法士には科学的リーズニング、物語的リーズニング、相互交流的リーズニング、実際的リーズニング、倫理的リーズニングと呼ばれる思考があることが明らかになっています。

各リーズニングにはそれぞれ長短があって、臨床家が治療・介入を進めるためには必要に応じて柔軟に組み合わせる必要があります。

作業療法ではほとんど指摘されていませんが、医師を対象にした研究ではこーした思考パターン(クリニカルリーズニング)は「感情」から強い影響を受けることが明らかにされています。

例えば以下の文献。

これらは医師が分析対象の書籍ですけど、ヘルスケアに関連する人なら誰でも参考になる内容です。

また、医師の凄さや大変さが本当に良く伝わってくるので、むしろ多職種連携を考えると医師以外の人にこそ超おすすめ。



さて先の文献では、ときに実践家の感情が臨床推論にバイアスを与えて、患者が大きな不利益を被っていることがあると指摘しています。

臨床で生じる過誤のほとんどは感情によって生じた思考の誤りであるものの、実践家はそれをなかなか認めようとしないし、そのことに気づいてすらいないこともあります。

もちろん、感情と一言でいってもさまざまな様態がありますので、そのすべてが思考パターンを歪めるわけではありません。

特にポジティブな感情は臨床で生じる事象の全体像を的確に把握し、しなやかな態度で問題を解決に導きやすくするなど肯定的な影響があります。

反対に、ネガティブな感情は臨床で生じる事象の枝葉に焦点を当てやすくし、全体像の把握を困難にするというデメリットがあるものの、リスク管理を行ううえでは危険なシグナルに敏感に反応しやすくなると言うメリットがあるでしょう。

大切なことは、臨床のあらゆるフェーズで感情が関与しており、それによって実践家の思考パターン(クリニカルリーズニング)に影響を与えると了解しておくことです。

ハイデガーが鋭く指摘したように、人間は気分存在であり、あらゆる人間的営為に感情が織りこまれています。

実践家はそのことを認識し、さまざまな感情が日々の臨床にどう影響を与えているかを鋭く観察しておく必要があるでしょう。