過去から現在そして未来へ



作業療法の名づけ親は、障害をもった当事者です。

障害者自身が、自らの障害体験を通して必要性を感じ、作業療法という領域を創唱したのです。

しかも彼は自ら作業療法を実践し、その実践をしたためた教科書を書き下ろしています。

作業療法は、障害者が名づけ育てた領域なのです。

その少し前に、哲学者が、作業を通して成長と健康を促進するというアイデアを示しました。

彼は、産業革命によって人間らしく生きにくくなった社会を内省し、人間の時間と空間を活き活きとした経験で埋める必要があると気づいたのです。

そのアイデアと医療を結びつけたのは、看護師です。

彼女は学生時代に適切な作業が病者を賦活すると気づき、哲学者のアイデアと看護ケアを結びつけたのです。

徐々に、先見性のある人たちの取り組みに共感した医師、ソーシャルワーカー、教師、芸術家たちが集結していきました。




作業療法が誕生したとき作業療法士は1人もいませんでした。

が、100年経過した現在では多職種の遺伝子を受け継いだ作業療法士が世界中に何万人もいます。

ヘルスケア領域には、医師、看護師、助産師、保健師、薬剤師、理学療法士、社会福祉士、臨床心理士、介護福祉士などさまざまな専門職があります。

それぞれの専門職はとても魅力的ですし、高度に専門化していますし、人類の健康と幸福に貢献しています。

作業療法はそれらの専門職に比べるとマイナーです。

とてもマイナーなんです。

けど、障害をもった当事者がその必要性に気づき、その名を提唱し、大切に育てた領域は、おそらく作業療法だけです。

作業療法はマイナーだけども、障害をもった人にとっては生きるために欠かせないものだったのです。

日本はこれから人口動態の関係でなかなかたいへんな状態に突入します。

障害をもった当事者が作業療法を必要としたように、これからの時代を生きる人にとって作業療法の価値がきっと再認識されるでしょう。

そのとき、作業療法の担い手がいなかったらとても困ります。

人類の福祉のために、ぼくは作業療法を目指す人が増えてほしいと願っています。